糖尿病についての詳しいお話

糖尿病のイメージ画像

糖尿病という病名を一度も耳にされたことがないという方は、あまりいらっしゃらないと思います。
そして漠然と、放置してしまうと大変なことになってしまうという怖さも、認識されていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。
しかし、実際にそれがどういう病気であるのかについては、あまり知られていないかと思いますので、まずは糖尿病という病気について、少し詳しくお話してみようと思います。

食事を摂ると、消化・吸収された栄養素が全身の細胞に送り届けられ、エネルギー源として利用されます。
一般的に、食事によって必要以上の栄養分を摂取した時でも、膵臓から分泌されるインスリンの働きによって、血液中のブドウ糖の量が過剰にならないよう、バランスをとることが出来るのです。
ところが、何らかの要因によって十分な量のインスリンが産生されなくなったり、産生されても適切に機能しなくなってしまうことがあります。
その結果、血管内にブドウ糖が慢性的に過剰となる病気が糖尿病です。

糖尿病にならないために

糖尿病にならないためには、何より生活習慣を改善することが大切と言えます。
しかしその前に、まずはご自身が今どんな状況であるのかを知ることから始めることが必要です。
もし、下記の症状の中で一つでも当てはまるものがおありの際は、ぜひお早めにご相談にお越しください。

このような症状はありませんか?

  • 健康診断などで「血糖値が高い」と指摘された
  • 喉がよく渇く、水をよく飲む
  • 尿の回数が増えた、尿のにおいが気になる
  • 体重が急激に増加、または減少した
  • 最近、疲れやすくなった
  • 満腹感が得られない(いくらでも食べられる)
  • 手足がしびれる
  • 足がむくむ
  • 皮膚が乾燥して痒い、皮膚に出来物ができやすくなった
  • やけどや怪我をしても、あまり痛みを感じない
  • 切り傷やその他の皮膚の傷が治りにくい
  • 視力が落ちてきた、目がかすむ

糖尿病の怖さは合併症にあり

糖尿病は、治療を放置したり、発見が遅れたりして合併症が出現してしまうと生活の質の低下につながり、最悪の場合、様々な臓器に異変が生じて命を落としてしまうことさえあります。
大血管に障害を及ぼす心筋梗塞や狭心症、脳梗塞は突然発症することも多く、注意が必要です。
そして、細小血管に障害を及ぼす「糖尿病神経障害」「糖尿病腎症」「糖尿病網膜症」が糖尿病の3大合併症と呼ばれています。

糖尿病性神経障害

足がしびれたり、足の裏に異常な感覚が出現します。
ひどくなると痛みで眠れない状態にもなります。
内臓の動きを調節する、自律神経の障害が出現すると、立ちくらみ、下痢、便秘、男の人ではED(インポテンツ)が出現します。

糖尿病性網膜症/白内障

重症化すると失明につながります。
早期に発見し加療することで失明への進行を阻止する必要があります。
定期的な眼科受診をおすすめします。

糖尿病性腎症

初期に症状はありません、尿検査で蛋白尿があるときは糖尿病性腎症の初期の可能性があります。
早期に加療しないと尿がでなくなり体がむくみ、腎不全の状態になります。
肺に水がたまり呼吸困難となります。
血液透析療法をしないと生きていけなくなります。

糖尿病の背景には、日常生活における食事と運動が大部分を占めています。
食生活の欧米化による生活習慣病の急激な増加とそれによる心血管病などの動脈硬化性疾患の増加は、日本人が古くから行ってきた食生活を見直す警鐘であるとも捉えられます。
糖尿病を正しく理解し、糖尿病の発症や合併症を未然に防ぐよう普段から健康的な生活スタイルを意識することが必要です。

糖尿病の治療について

糖尿病治療の基本

糖尿病においては、食事療法と運動療法が治療の基本であり、実は薬より大切である事を忘れてはなりません。
特に、糖尿病は食事と密接な関係にあるインスリンの不足や欠乏から起きる病気であり、インスリンが不足すると食べ物から摂取したブドウ糖が利用されなくなり、利用されないブドウ糖が増え続けることで高血糖となり、この状態を放置することで合併症が起きるのです。
ですから、合併症を防ぐために「食事の量とバランスの見直し=食事療法」が重要となるのです。

血糖値を安全な状態に下げることが、怖い合併症を出さないために必要です。
そのためのお薬は患者さんの病状にあわせて、生活習慣、年齢を加味して決めていかなくてはなりません。
また飲み薬で対応できなければ、インスリン注射での治療も必要となります。
血糖値の高い状態が長く続くと怖い合併症が出現してきます。
合併症をおこさないために、血糖だけでなく、血圧、高脂血症の治療もあわせて行う必要もあります。

高血圧

高血圧とは

高血圧は言葉の通り、血圧が高い状態が続いてしまう病気です。
日本高血圧学会のガイドラインによれば、診察室で測定した場合は「収縮期血圧(最高血圧)が140㎜Hg以上、拡張期(最低血圧)が90㎜Hg以上」、糖尿病や腎臓病などがある場合は、家庭血圧で「収縮期125㎜Hg以上、拡張期75㎜Hg以上」とされており、厳格でさらに低値でのコントロールが必要となります。

血圧は自律神経によって調整されており、刻一刻と変化しています。
起床時やストレスが強いときは血圧が上がりますし、夜にリラックスしているときなどは低くなります。
従って、一度血圧を測って基準値を超えていたとしても、一概に高血圧とは言えません。
血圧が高い状態が継続し、血管に過度の負担がかかってることが問題となるのです。

高血圧になる原因

高血圧症の90%以上は、血圧が高くなる原因をはっきりとは特定できない「本態性高血圧症」です。
もっとも、いくつかの要因との連関性が指摘されています。
代表的なものとしては、遺伝的要因、塩分過多、肥満、ストレス、喫煙、老化、極度の寒さがあります。
このうち遺伝的要因とは、「親が高血圧症の場合は、その子供も高血圧になりやすい」というものであり、両親が高血圧症の場合は60%、一方の親のときでも30%の確率で高血圧の子供が生まれると言われています。どちらも高血圧症でない場合は5%ですので、遺伝的な要素が指摘されているのです。

ただし、「寒冷地に居住する両親が高塩分、高脂肪の食事を続け、運動もほとんどしていない場合、その子供も同様の生活環境に置かれていることが多い」という側面も考えられますので、遺伝的な要因については引き続き検討が必要との見方もあります。
尚、本態性高血圧症のほかに、「他の病気(バセドウ病、大動脈縮窄症、髄膜炎など)」に起因して血圧が高くなる二次性高血圧症などもあります。

高血圧の予防について

特に、食事内容の改善(食事療法)にあたっては、果物に含まれる糖分やカリウムなど、一定の制限が必要となることもありますので、「何となく体に良さそう」といった曖昧なものではなく、医師の指導のもとで二人三脚の改善を行うことが必要となります。

当院と一緒に高血圧を予防しましょう

  • 塩分の摂取量を減らしましょう
  • 野菜や果物、海藻類、豆類を摂取しましょう
  • コレステロールや飽和脂肪酸は控えるようにしましょう
  • カルシウム不足に気を付けましょう
  • 肥満防止に努めましょう(適正体重を維持します)
  • 適度な運動習慣を身につけましょう
  • お酒の飲み過ぎ注意しましょう
  • 禁煙しましょう(受動喫煙にも気を付けましょう)
  • 入浴の際は、脱衣所や浴室を温めておきましょう
  • 真夏などはこまめに水分補給しましょう

脂質異常症

脂質異常とは

最近では、テレビやインターネット広告などで目にする機会も増えているかと思いますが、それでも糖尿病や高血圧に比べれば、まだまだ耳馴染みのない病名ではないかと思います。
脂質異常とは、血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪の値が慢性的に高い状態、もしくはHDL(善玉)コレステロールの値が低い状態など続くことです。

一般的に、LDLコレステロール値が140㎎/dl未満、HDLコレステロール値が40㎎/dl以上、中性脂肪が150㎎/dl未満です。
この3つの数値のいずれかが逸脱すると脂質異常症になります。
また、糖尿病や遺伝的疾患などの罹患状況により、より厳格なコントロールが必要となります。

脂質異常症になっても、病状がかなり進行するまでは自覚症状があまり見られません。
そのため、適切な治療を受けずに放置しておられる方も少なくないようです。
しかし、血液中に含まれる脂質の濃度が異常値を示す状態が続くと、動脈硬化が進行したり、心筋梗塞や脳梗塞を発症する一因となります。

脂質異常の治療について

脂質異常においても、食事療法、運動療法、薬物療法が3本柱であり、やはり特に重要なのは食事療法です。
食事の内容は、動物性の脂肪を減らして魚や植物性の油を摂取する、3食きちんと摂る、腹八分目にする、就寝前2時間は食べない、よく噛んで食べる、早食いは控える、塩分を減らす、お酒はほどほどに、清涼飲料水や菓子類は過剰摂取しない、などがポイントです。

また、適度に運動することも重要です。
定期的に有酸素運動を行うと、中性脂肪が低下し、善玉コレステロール値は上昇します。
散歩やウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳などを1日に30分、これを毎日行うことが理想ですが、仕事などで難しい方も多いでしょうから、まずはできる範囲で始めることができるよう、当院で一緒に相談しましょう。
そして、これらによっても改善が見られず、コレステロール値が極めて高く、動脈硬化のリスクが高い患者さんの場合には、症状が悪化しないよう薬物療法も行いきます。

痛風・高尿酸血症

痛風と高尿酸血症

痛風はかなり昔から知られた病名かと思います。
そして、インターネットなどの情報が非常に豊富となった昨今では、痛風について調べてみると。高尿酸血症という病名を目にすることも多いと思います。

痛風とは

ある日突然、足の親指などの関節が赤く腫れだし、激しい痛みが起こる疾患です。
名前の由来については諸説ありますが、風に吹かれただけでも痛くなるため、「痛風」と呼ばれるようになったと言われています。
血中の尿酸値が高い状態が長く続くと、尿酸が関節の中で固まって結晶化します。そうなると、沢山の白血球が集まってきて排除しようとするため、炎症が起こって痛風を発症するのです。

強い痛みを伴う病気ですが、近年は研究が進んでよい薬も開発されていますので、適切な治療と生活改善により、健康的な生活を取り戻せるようになります。
しかし、痛風の方は、糖尿病や高血圧、脂質異常などを併発しているケースも多いので、そのような場合は、合併症の治療も同時に必要となります。

高尿酸血症とは

高尿酸血症は、栄養過多(食べ過ぎ)などによって内臓脂肪が溜まっていき、血液中に含まれる尿酸の量が多くなってしまう病気です。
内臓脂肪によって産生された遊離脂肪酸が肝臓に運ばれることにより、プリン体の代謝が過剰になり、尿酸値が高まっていくのです。
まさに、食生活に直結しているような病気ですので、まずは当院と一緒に食生活の改善に努めましょう。

このような方は尿酸値に注意が必要です

  • プリン体の多い食品(レバー、エビ、魚の干物、肉類)をよく食べる
  • お酒(ビールなど)を飲み過ぎることがある
  • 清涼飲料水をよく飲む
  • 激しい運動をすることがある
  • 30歳以上の男性(全体的に尿酸値が高めです)
  • 内臓肥満が蓄積している
  • ストレスを感じることが多い
  • 血縁者に痛風の人がいる
  • 水分をあまり摂らない

痛風・高尿酸血症の治療について

尿酸値をいかにして下げるのかを考えて治療を進めます。
それには、プリン体を多く含む食品の摂取を控えめにし、バランスの良い食事を摂るようにしてください。

さらに、運動療法も併用し、肥満の解消に努めます。
この運動も、やり方次第では尿酸値が上がってしまいますので、注意が必要です。
特に激しい運動は尿酸値を一時的に上昇させ、発汗などによる脱水症状でさらに悪化することも考えられますので、当院の指導にもと、適度な運動を心がけましょう。
また、食事・運動以外にも、尿酸の生成を抑制する薬や、尿酸の排泄を促す薬を処方することもあります。
アロプリノールやフェブキソスタットなどの尿酸合成阻害薬、ベンズブロマロンなどの尿酸排泄促進薬が効果的です。